BSJ本屋さん開業マネー講座

【第1回】ひばりブックス代表 太田原由明さん

BSJでは、新しく開業された書店さんへのインタビューを通し、「書店の開業に活用できる支援施策」を紹介していきます。近年、起業を後押しする政府の方針もあり、創業者への支援施策が国・自治体とも充実してきています。条件に合うものがあれば、ぜひご活用いただければと思います。(これまでのインタビューはこちら

第1弾は、2020年に静岡県でオープンした「ひばりブックス」の太田原さんにお聞きします。

―ひばりブックスさんはどんな本屋ですか。

18坪の新刊販売スペースにカフェとギャラリーを併設した書店です。
詩集・短歌コーナー、外国文学、アート、人文書などをセレクトして多く取り揃えています。町にある本屋として雑誌、週刊誌、絵本、地図ガイドなども取り扱っています。ギャラリーでは絵本の原画展、写真展など本の出版に絡めた展示のほか、地元の若手作家さんにもお声掛けして展示を行なっています。
新型コロナが落ち着いてきてからはトークイベントも積極的に開催しています。

―開業にあたって、どのように準備を進められたのでしょうか。

取次に口座を開設すること、銀行の融資、物件の選定と契約を同時進行しました。融資に関しては、静岡県よろず支援拠点(※1)に相談に行きました。そこでメインとなる信用金庫をご紹介いただき融資へと進みました。

―活用された国や自治体などの創業支援施策を教えてください。

信用金庫の担当者の力添えをいただき、地域創生起業支援金(※2)に応募してほぼ上限の金額を助成いただきました。「読書は文化の土台・地域住民参加型のコミュニティを作る」といった事業内容で採択されました。

―これから開業を目指す方へのアドバイスをいただけますでしょうか。

様々な流通経路を利用することで以前に比べれば開業へのハードルは少し低くなったかもしれません。しかし本を売って利益を出していくということの厳しさは変わりません。
どのように利益を確保していくか、綿密に考えてから開業してください。支援金、助成金、補助金等、うまく活用しながら事業を継続・拡大していくということもひとつの生き残る知恵かと思います。お客さまの期待はとても大きく、本屋があること自体がここに暮らす人々の喜びとなっていることを感じています。知恵を絞り、様々な人の協力を仰ぎ、継続できる本屋の形を見つけていただけることを願っております。

 

(※1)―よろず支援拠点とは―
国が全県に設置している、経営上のあらゆるお悩みを受け付けるワンストップ相談所です。様々な分野の専門家が在籍しており、何度でも無料で相談することができます。

(※2)―地方創生起業支援金とは―
地域の課題解決に資する事業を起業される方を対象に、事業費の2分の1(最大200万円)を助成する制度です。内閣府の助成金ですが、実際には各都道府県が選定する団体が運用しています。活用するためにはまず執行団体を調べる必要があります。
多くの市町村では創業者のための相談窓口を設けています。開業を予定されている自治体の窓口や上記のよろず支援拠点に遠慮なく相談してみましょう。

文: 伊東 直人(中小企業診断士)
本職は経済官庁に勤務する、何より読書好きな国家公務員。