調査・研究

「まちの本屋さんのいま」調査 2023.2.20発表

私たち、ブックストア・ソリューション・ジャパンは、“書店という商い”の未来に希望を生み出すために、書店をとりまく市場環境、たとえば書籍購入者の意識、書店の利用実態、読書に対する考え方などの現況を明らかにすることを目的に、インターネット調査を行いました。

調査実施期間は、2023年1月24日~25日の二日間。調査対象者は、全国の10代から60代まで、および70代以上の方々で、対象者数は1,122名、その内訳は、男性701名(構成比62.5%) 女性421名(同37.5%)となっています。また世代別構成比では、45~49歳が13.5%、70代以上が13.1%と高く、一方、10代は0.6%、20~24歳が2.0%、25~29歳が4.1%という構成比で、10代から20代の占める割合でも6.7%に留まっています。
なお、今回の調査における「書籍(本)」とは、コミック・マンガ、古書籍(古本)も含みます。その一方で雑誌・電子書籍は除いています。すなわち、この調査では書籍(本)とは、紙の書籍(本)のことを示しています。ご留意ください。

■調査サマリー

この1年間の主な書籍購入チャネルと購入された書籍の主な分野(カテゴリー)

この1年間で、書籍を購入する主なチャネルとして、最も多いのは、新刊本のEC(インターネット通販)に代表されるオンライン書店です。4分の1以上の生活者が回答しています。次いで、都市郊外やショッピングモールなどにある書店(新刊書店)、自宅から歩いて行ける距離にある新刊書店、あるいは自分が住む市区町村にある新刊書店が続きます。
生活者がこの1年間に購入した書籍の主な分野は、文芸書(小説、エッセイ(随筆)など)、趣味・実用書(スポーツや音楽、手芸なども含めた「趣味」の本)、コミック・マンガの順で、この3分野が抜きんでています。生活者は6人に一人の割合で文芸書、趣味・実用書を主に購入しており、また7人に一人の割合でコミック・マンガが主に購入しています。「娯楽としての読書」(読書を娯楽とする考え方)を半数近くの生活者が求めていると推察できます。

書店利用の実態

自身の住む市町村に新刊書店があると回答した生活者は85%近くを占めており、そのうち2店以上あると回答した生活者は、全体の半数を超えています。なお、書店(実店舗)の利用頻度に関しては、「月1回から年1回程度である」という回答者は3分の2近くに達しています。また、新刊書店(実店舗)・古書店(実店舗)における1ヵ月間の平均的な書籍購入金額は、9割近くの生活者が0~2000円未満と回答しています。ここからは、実店舗で本を購入していない生活者が相当数存在することが想定されます。

「行きつけの書店」がある、または過去に「行きつけの書店」があった回答者は、全体3分の2近くに達しています。現在、行きつけの書店があるとした回答者は、全体の38%を占めている一方で、行きつけの書店を持ったことのない回答者も35%にのぼります。では、その書店を「行きつけの書店」にした理由、あるいは行きつけの書店にする条件に関しては、45%以上の回答者が「自宅の近所にあること」をあげています。次いで「品揃えが自分に合っていること」、「入りやすい店構えであること」、「適度な広さであること」、「通勤や通学の経路であること」、「その書店の雰囲気が好きなこと」、「ポイントが貯まること」の順であげられています。最も重視されているのは立地です。人びとの生活動線上にある店舗が行きつけの書店になりやすいと推察されます。なお、書籍の品揃えを理由(条件)にしている回答者は3割近くを占めており、次いで店舗への入りやすさ、広さ、空間の雰囲気という書店という「空間」のありかたが重視されていると推察できます。

書店(実店舗)に行く理由、行くようになる条件に関しては、「自宅の近所にある」、「実際に店舗で実物を見て購入したいから」という回答が抜きんでています。「自宅の近所にある」は36.2%、「実物を見て購入」は34.4%の生活者が回答しています。次いで、2割強あるいは2割の生活者が「情報収集のため」、「試し読みをするため」、「品揃えが自分に合っているから」と回答しており、つまり、立地を除けば、実店舗に行かなければ体験しがたいこと、あるいは実感しがたいことが理由、条件となっていると推察できます。さらに「書店の雰囲気が好きだから」が6人に一人の割合で、「購入後直ぐに読みたいため」は7人に一人の割合で支持されています。

また、書店(実店舗)の利用スタイルについては、抜きんでているのは「気になっている本の試し読みをする」というスタイルであり、3割強の生活者が支持しています。次いで、4人の一人の割合で「空き時間があれば立ち寄る」、「目的の本が見つかったら、まっすぐ帰る」と回答しています。さらに5人に一人の割合で「休日などの時間の余裕のある時に行く。(時間に制約されないで楽しむ)」、「意外な本、予期せぬ本との出合いを楽しむ。」と回答しています。彼らは、書店に行くこと自体を楽しんでいる人たちだと推察します。

読書の目的

読書をする目的に関しては、抜きんでているのは、「娯楽のため(楽しむため)」、「趣味を楽しむため」であり、3人の一人の割合で支持されています。次いで、4人に一人の割合で「新しい情報・知識を得るため」、「気分転換のため」、「読書はおもしろいから」が支持されています。さらに2割弱の生活者が「教養を高めるため」と回答し、6人に一人の割合で「自分を高めること」が支持されています。読書の目的には、「娯楽としての読書」と「機能としての読書」(知識や情報を得るための読書という考え方)が併存しています。とはいえ、読書の目的としては、「娯楽」のほうが、比重が高くなっています。

書店の周辺にあったらよいと思うお店(あるいは業態)

トップスコアで抜きんでているのは、「スーパーマーケット」で、半数を超える生活者が回答しています。次いで、4割強の生活者が「百円ショップ」、4割弱の生活者が「カフェ」と回答しています。さらに「パン屋(ブーランジェリーなど)」、「コンビニ」、「喫茶店」、「ドラッグストア・薬局」が続きます。なお、「喫茶店」、「ドラッグストア・薬局」に関しては、おおよそ3人に一人の割合で回答されています。次いで、 おおよそ4人に一人の割合で「洋菓子店」、「公園」、「図書館」が回答されています。ついでに寄れるという利便性という観点から、食品などの生活必需品を扱う小売業が主流のように見てとれます。なぜか書店とパン屋は相性がよいようです。その一方で飲食サービス業や、公園・図書館などの「人と人とがつながるチャンスのある空間」なども支持されていると推察できます。

(文責:BSJ理事 辻 宏)

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